【相続】遺言によっても自由に処分できない「遺留分」とは 12016年10月20日 08:53

1.「遺留分」とは

近年、『終活』の広まりにより、生前に遺言を作成しておきましょうという動きが活発になってきています。

遺言では、例えば、1人の相続人にすべての財産を相続させることを内容とした遺言であっても、遺言作成のルール(形式的要件)を遵守していれば有効なものとなります。つまり、例えば、父親が長男にだけ全財産を相続させるという遺言を残すことも可能です。

しかし、長男のみが父親の全財産を相続し、他の次男や三男は何も相続しない(できない)という結論は、次男や三男が相続人の欠格事由(民法891条各号)などにより相続人となることができない場合は別として、妥当でしょうか?

そこで、法は、相続制度は、残された遺族の生活保障、被相続人(お亡くなりになった人)の遺産形成に相続人が貢献した部分もあるとの考えなどから、「遺留分」(民法1028条以下)という権利を、一定範囲の相続人に限り、保障しています。

なお、「遺留分」は権利であり、その権利(遺留分減殺請求権)を行使するか否かは遺留分権利者の自由です。ただし、遺留分減殺請求権には期間制限がありますので注意が必要です(民法1042条)。

(減殺請求権の期間の制限)
第千四十二条  減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

2.「遺留分」権利者とは

では、「遺留分」権利者とは誰か?
民法1028条をご覧下さい。

(遺留分の帰属及びその割合)
第千二十八条  兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一  直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二  前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

少し分かりにくいかもしれませんが、被相続人(お亡くなりになった人)の配偶者、子、直系尊属、子が先に亡くなった場合には子の代襲相続人(例:被相続人の孫)が遺留分権利者であると定めた条文です。これに対し、兄弟姉妹は遺留分権利者ではありません。

ですから、例えば『サザエさん』において、仮に波平さんが亡くなり、全ての財産をますおさんに遺贈するという遺言を作っていたとしても、配偶者であるフネさん、子であるサザエさん、カツオくん、ワカメちゃんは遺留分を主張することができます。
これに対し、波平さんもフネさんも亡くなり、カツオくんが不慮の死を遂げ、全ての財産をますおさんに遺贈するという遺言を作っていた場合、相続人は兄弟であるサザエさんとワカメちゃんになりますが、兄弟には遺留分は認められないため、二人は遺留分を主張することはできません。

3.遺留分の割合

それでは、「遺留分」の割合とはどの程度なのでしょうか?

前述の民法1028条では、遺留分の割合も定めています。

第千二十八条  兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一  直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二  前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

したがって、先ほどの『サザエさん』の例で波平さんが亡くなったケースの場合では、個別的遺留分の割合は、フネさん:遺留分2分の1×法定相続分2分の1=4分の1、サザエさん・カツオくん・ワカメちゃん:遺留分2分の1×法定相続分6分の1=12分の1ずつ、となります。

・・・以下、遺言によっても自由に処分できない「遺留分」とは 2 へつづく