【離婚】不貞行為の慰謝料2023年07月10日 11:27

【離婚】不貞行為の慰謝料

 離婚の話が夫婦間で出されるようになった場合、当たり前ではありますが、夫婦関係が円満にはいかなくなった事情があることが大勢です。
 この場合、仮に夫婦のどちらか一方に原因があったとしても、慰謝料の支払義務が当然に生じるわけではありませんし、また、私自身の経験で申し上げれば、離婚のご相談の半数以上は慰謝料の支払い義務があるとまではいかない事案という印象が強いです。
 
 もっとも、これは慰謝料の支払い義務が生じるであろうと思われるご相談もあり、その典型的な例が、夫婦の一方が不貞行為(一番分かりやすい例は、肉体関係のある不倫)をした場合です。
 
 そこで、今回は、「家庭の法と裁判」という雑誌の2017年7月号から5回に亘って連載された、不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(大塚正之弁護士)での分析結果の一部より、「裁判において認められる慰謝料の額」を紹介させていただきます。

 不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(大塚正之弁護士)では、平成27年10月から平成28年9月までの1年間に東京地方裁判所で言い渡された判決の中から、不貞行為慰謝料に関する裁判例123件が分析されています。

この分析結果で、まず目を引くのが、

◆ 原告の割合は妻が夫より2倍以上多い
◆ 被告については、不貞行為の相手方(いわゆる不倫相手)のみを訴えているのが全体の80%弱、これに不貞行為をした夫あるいは妻と不貞行為の相手方を一緒に訴えるパターンを加えると、90%以上が不貞行為の相手方(いわゆる不倫相手)を被告とするもの

という結果です。

 また、請求額と裁判で認められた認容額についても分析がされており、

◆ 不貞行為の慰謝料として請求される額は多い順に300万円、500万円、400万円
◆ 一方で、最終的に裁判所が認めた不貞行為の慰謝料額は多い順に150~199万円、100~149万円、200~249万円、50~99万円
◆ 分析した裁判の70%が、裁判所に請求額の半分以下でしか不貞行為の慰謝料を認められていない

とのことでした。

 先程述べましたように、この分析結果は平成27年10月から平成28年9月までの1年間に東京地方裁判所で言い渡された判決の中から、不貞行為慰謝料に関する裁判例123件をピックアップしたものですから、この分析は、今から7年前のものであり、全国的な統計結果でもありません。

 しかし、感覚としては令和5年の現在も同様の傾向では無いかなと思われますし、少なくとも札幌の離婚裁判も原告と被告の割合や裁判所が最終的に認める不貞行為の慰謝料額としては似たような傾向なのではないかなと思われます(これに対し、請求額については、裁判を起こす場合、請求額が高くなればその分、裁判所に納める収入印紙の額も高額になるとったこともあり、200~300万円が札幌では多いような気が致します)。

【離婚】別居中の児童手当の受給権者について2023年06月26日 17:04

【離婚】別居中の児童手当の受給権者について

 今年、政府は「異次元の少子化対策」を掲げ、「こども・子育て支援加速化プラン」を令和6年度から3年に掛け、集中的に取り組むと発表しました。
 その中には、「児童手当」について、高校卒業まで延長する(現在は中学校卒業まで)、所得制限を撤廃する、多子世帯へ増額するといったものも含まれ、令和5年6月までに具体的内容を確定するとされています。
  
 このように「児童手当」は子育てをする上で、非常に重要な「収入源」であるため、政府としても、子育て支援策として力を入れ、より手厚くしようとしています。

 離婚を前提として子どもを連れ別居をしようとする方にとっても、「児童手当」の受給の有無はとても関心の高いところです。
現に、離婚の法律相談に来られる方の中には「児童手当が夫の口座に入っているのを、私に変更できませんか?」と質問される方が一定数いらっしゃいます。

 これは、夫婦の場合「児童手当」を受給できるのは所得の高い方(生計を維持する程度が高い人と定められています)になるため、夫が受給権者になることが多いことからの質問になります。

 しかし、平成24年4月に児童手当が制度変更され、「別居中の両親が生計を同じくしていないような場合(離婚または離婚協議中につき別居している場合)については、同居している人が児童を養育していると考えられることから、児童と同居している人に支給され」ることになりました(厚生労働省「児童手当Q&A Q7より」)。

 そのため、例えば、離婚協議を申し入れる内容の内容証明郵便の謄本、離婚の調停期日呼出状(家庭裁判所から送られてきます)、家庭裁判所における事件係属証明書、弁護士の証明書などで離婚協議中であることが明かな書類を市区町村へ提出し、「児童手当」の認定請求を行えば、児童と住所が同じ親が「児童手当」を受給することができるようになっています。

 この制度変更は、先程述べましたとおり、平成24年4月になされていますから、変更されて既に10年以上経過します。しかし、未だに役所の窓口の方が知らず、「できません」と断られたということもあるようですから、注意が必要です。

【離婚】養育費を確保するために③ ~調停が成立したその後に~2023年06月09日 14:55

【離婚】養育費を確保するために③ ~調停が成立したその後に~

 令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告(厚生労働省)によりますと、離婚時に養育費の取り決めをした母子世帯の割合は46.7%であるのに対し、離婚した父親からの養育費の受給状況として「現在も受けている」のは28.1%にとどまるとされています。

 この調査結果からは、そもそも離婚時に養育費の取り決めがされている母子家庭の割合は半数未満と低い上、せっかく取り決めをしても養育費を支払ってもらえない母子家庭の割合がかなり多いことが分かります。
 そこで、今回は、家庭裁判所の調停や審判(裁判の一種です)で養育費を取り決めた後、相手方が養育費を支払わない場合に何ができるのかについて書かせていただきます。

◆履行勧告
 支払う義務を負う者が、家庭裁判所で決めた調停や審判などの取決めを守らない場合、家庭裁判所に対して履行勧告の申出をすることで、家庭裁判所が相手方に取決めを守るように説得したり、勧告したりしてくれます。
 この履行勧告の手続に費用はかかりません。
 ただし、支払う義務を負う者が勧告に応じない場合に支払を強制することまではできません。

【家庭裁判所による手続説明】
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_05/index.html

◆履行命令
 支払う義務を負う者が、家庭裁判所で決めた調停や審判などの取決めを守らない場合、家庭裁判所に履行命令を申し立てることができます(相手が正当な理由なく履行命令に従わないときは、過料の制裁に処せられることがあります)。
 この手続にも費用はかかりません。
 ただし、相手方が履行命令に応じない場合に、履行命令の手続の中で相手方の財産を差し押さえるなどして強制的に養育費の支払をさせることまではできません。

◆財産開示手続
 調停や審判などの裁判所の手続を利用した方、公正証書を作成した方(ただし、公正証書や条件が付けられた調停調書には執行文を付与する必要があります)が使える制度となります。
 具体的には、裁判所に、支払い義務を負う者を呼び出し、財産について開示させる制度となります。
 この制度は以前からありましたが、令和2年の民事執行法改正により罰則が強化され、呼び出しを受けた者が出頭しなかった場合、出頭しても宣誓を拒んだ場合や虚偽の陳述をした場合には6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
 ただし、例えば、相手方が嘘の陳述をしていたとしても、その嘘を見抜き証明することは難しいですので、財産開示手続の実効性がどの程度あるのかはやや疑問が残るところです。

◆第三者からの情報取得
 調停や審判などの裁判所の手続を利用した方、公正証書を作成した方(ただし、公正証書や条件が付けられた調停調書には執行文を付与する必要があります)が、このほかに使える制度としては、

① 給与債権情報取得(市町村または日本年金機構に裁判所が勤務先の情報提供を命令する)
② 不動産情報取得(登記所に裁判所が不動産情報の情報提供を命令する)
③ 預貯金債権情報取得(銀行等の金融機関に裁判所が預貯金等の情報提供を命令する)
④ 振替社債等情報取得(証券会社等に裁判所が株式等の情報提供を命令する)

 があります。

 これらはいずれも令和2年4月1日から新しく施行された制度になります。
 それぞれどういった手続なのか、詳細についてはこちらの裁判所のサイトを確認いただければと思いますが、やや難しい部分もありますので、悩んだときには、お一人で抱え込まれず、一度、弁護士に相談されることをおすすめいたします。

【裁判所 養育費に関する手続】
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/youikuhi-tetsuzuki/index.html#Q&A2-1

【離婚】養育費を確保するために② ~札幌市 ひとり親家庭等養育費確保支援事業~2023年05月26日 15:02

【離婚】養育費を確保するために②
 ~札幌市 ひとり親家庭等養育費確保支援事業~

 令和3年より札幌市において、「ひとり親家庭等養育費確保支援事業」が始まっております。
 具体的には

◆民間ADRを使って養育費の取り決めのための協議を行う場合の第1回までの調停費用を補助(上限5万円)

◆養育費の取り決めにかかる公正証書作成費用や家庭裁判所の調停申立て費用などを補助(上限2万4000円)

◆保証会社との間で養育費保証契約を結ぶ際にかかる費用の補助(上限5万円)
といった制度が存在します。
 
 それぞれ内容がぱっと見では分かりにくいところがありますので、1つずつ簡単に説明しますと、
 1つめの民間ADRとは、札幌市でいえば、札幌弁護士会紛争解決センターでの調停申立てが考えられます(その他にも法務大臣の認証を受けた認証ADR事業者が含まれます)。
 ただし、札幌弁護士会の紛争解決センターで調停を申し立てるためには、まずは弁護士による法律相談を札幌弁護士会法律相談センターに申し込む必要があります(申立てには弁護士の紹介状が必要になるためです)。
 なお、札幌弁護士会紛争解決センターの調停は、申立手数料が1万1000円(令和5年5月現在)、成立した場合には一定の手数料を納める必要があります。また、原則として3回以内の調停で解決することを目指す運用をしているようです。
 ただし、札幌市では、「第1回まで」の調停費用を補助とのことですので、具体的に幾らまで補助してもらえるのか分からない部分がありますので(申立て手数料1万1000円は含まれそうですが、成立した場合の手数料まで含むのか確認が取れていません)、この補助を使って札幌弁護士会紛争解決センターでの調停申立てを検討されたい方は、札幌弁護士会紛争解決センターに一度お問い合わせされることをお勧めいたします。

 2つ目は、養育費の取り決めにかかる公正証書作成費用や家庭裁判所の調停申立て費用を、2万4000円を上限として補助するというものです。
 家庭裁判所の調停申立費用は、数千円程度となります。
 また、養育費の取り決めにかかる公正証書作成費用の作成手数料は、月額養育費×支払月数で計算されます。
ただし、養育費の支払期間が10年を超える場合は10年間として計算されます(公証人手数料令第13条1項)。
 例えば、【子ども:3歳、人数:1人、金額:月額2万円、期間:20歳まで】の場合には、2万円×12カ月×10年(20歳までは17年ありますが、手数料の計算は最大で10年)=240万円ですから、手数料は1万1000円となり、この金額を補助してくれることになります。
 ただし、札幌市が補助するのは、あくまで「養育費」に掛かる部分のみとなります。
 公正証書の中に財産分与や慰謝料、年金分割の取り決めなどがあれば、それは補助の対象「外」となり自己負担となります。
離婚全体の記載がある公正証書作成の費用については、お近くの公証役場にてお問い合わせ下さい。
東京の昭和通り公証役場のホームページに、分かりやすい具体的な例が書かれていました 

 http://kousyouyakuba.net/ippankouseisyousyo/rikon-youikuhi-isyaryo/

 最後は、保証会社との間で養育費保証契約を結ぶ際にかかる費用の補助です。

 まず、「養育費保証契約」とは何か?というところですが、これは、事前に、養育費を受け取る親(Aさん)と保証会社との間で保証契約を締結することで、養育費を支払う親(Bさん)が支払いを怠った場合、保証会社が、養育費を支払う親(Bさん)に代わって、養育費を受け取る親(Aさん)に支払うというものです。
 ただし、札幌市が補助するのは、保証会社と養育費保証契約を締結する際に必要となる保証料や住民票、収入印紙等の取得費用に限られます。
 したがって、保証会社の多くは、初回の保証料のほかに毎月の手数料が発生したりしますので、最初に掛かる費用(最大5万円)以外は、自己負担となります。
 また、こうした「養育費保証契約」の中には、養育費を受け取る親(Aさん)と保証会社との間で保証契約を締結するだけでなく、養育費を支払う親(Bさん)と保証会社との間でも保証委託契約を最初に締結することが必要なものもあります。

 そのため、養育費を支払う親(Bさん)の協力が得られなければ、そもそも「養育費保証会社」を結べない場合もかなりあるのかなという印象があります。

【札幌市のウエブサイト】
https://kosodate.city.sapporo.jp/mokuteki/money/hitorioya/10962.html

【札幌弁護士会紛争処理センター】
https://www.satsuben.or.jp/center/by_content/detail02.html

【離婚】養育費を確保するために① ~法務省による情報提供~2023年05月12日 15:36

離婚をしたいとき、離婚をすることになったとき、夫婦の間に子どもがいる場合には、「養育費」について話し合いがされることが多いと思われます。

しかし、話し合いでは決着がつかない場合、あるいは払うと言っていたのに相手が払わない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用することを検討しなければなりませんが、申立書を作るということの負担、ハードルは大きいものではないでしょうか。

同様に、話し合いをしたけれど、その取り決めを「合意書」にするにはどう書いたらいいのか、あるいはそもそも何をどう決めていけばいいのか分からない…

離婚を二度三度と経験される方は多くありません。離婚のご相談を受けている場面で「生まれて初めて経験したので分からない」、こうしたコメントをされる方は多いなという印象があります。

もちろん、私たち弁護士といった法律の専門家に依頼をしてしまえば、こうした書類を作成したり、中身を考えたりするのは弁護士等になりますから、ご自身の負担やハードルはぐっと減ります。

が、その分、弁護士等の費用がかかってしまいます。

これから一人親として子どもと生活をしていかなければならない場面ですから、できれば少しでもお金は掛けたくないというのが、おそらく多くの方の本音ではないでしょうか。

こうした声にこたえる形で、法務省は、法務省ウエブサイトで、養育費や面会交流の合意書のひな形、養育費の算定表(家庭裁判所の調停で使われている養育費を決める際に参考にされる表のことです)、養育費バーチャルガイドのYouTube動画などを提供しています。

このほかにも知りたい情報を見つけられるQ&A、調停を簡単に申立てすることができるよう簡易な申立書書式の提供(作成するための動画もあります)を行っています。

調停は必ずしも弁護士を就けなければ進められない手続ではありませんので、まずはご自分でやってみたい!という方には、こうした法務省の取組が参考となると思われます。是非ご活用ください。

ただし、離婚を含む夫婦関係調整調停事件について、2020年の統計ではありますが、代理人として弁護士が就いている割合は56.0%にのぼっており(弁護士白書2021年版より)、かつ、この割合は年々増加傾向にあります。

そのため、「自分で頑張って申立てをしてみたけれど、相手方には弁護士が就いていて不安になった」というご相談も時々お見受けします。

先ほど述べましたとおり、弁護士を就ければ弁護士費用といった費用は、どうしても掛かってしまいます。ですが、弁護士費用を立替えてくれる法テラスが利用できる場合もありますので、悩んだときには、お一人で抱え込まれず、一度、弁護士に相談されることをおすすめいたします。 

【法務省 離婚を考えている方へ】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00011.html

【法務省 離婚知りたい情報Q&A】

https://www.moj.go.jp/MINJI/top.html

【法務省 養育費調停の簡易な申立て書式】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00288.html

【法テラス】

https://www.houterasu.or.jp/