【犯罪被害者】性犯罪関係の法改正② ~16歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設~2023年08月22日 11:14

【犯罪被害者】性犯罪関係の法改正② ~16歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設~
 令和5年(2023年)6月16日、刑法を含む、性犯罪関係の法律の大幅な改正法が成立し、その大部分の規定が同年7月13日から施行されました(※施行とは、法律の効力が生じている状態といった意味合いです)。
 
 今回は、新たに新設された「16歳未満の者に対する面会要求等の罪」についてお話をさせていただきます。

 改正後の刑法182条には、以下の規定が新設されました。

(十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条 わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
2 前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該十六歳未満の者と面会をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

 そのため、例えば、16歳未満の子どもに対し、わいせつ目的で、断られているのに何度も繰り返し会う事を要求した場合、16歳未満の子どもに対し、わいせつ目的で援助交際の約束で会う事を求めた場合などには、16歳未満の者に対する面会要求等の罪に当たることになり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が処せられることになります(ただし、13歳以上16歳未満の子どもが被害者の場合には、加害者が5歳以上年長である場合に限られます)。
 また、わいせつ目的で会うことを要求し、実際に会う場合には、2年以下の懲役または100万円以下の罰金と刑罰が重くされています。

 なお、このほかにも性交等をする姿、性的な部位を露出した姿などの写真や動画を撮影して送るよう要求することも、刑法182条3項により処罰の対象とされており、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が処せられます。

 これらの規定が新設された趣旨についてですが、法務省のQ&Aでは、「16歳未満の人は、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力に欠けるため、性犯罪の被害に遭う危険性が高いといえます。そこで、16歳未満の人が性被害に遭うのを防止するため、実際の性犯罪に至る前の段階であっても、性被害に遭う危険性のない保護された状態を侵害する危険を生じさせたり、これを現に侵害する行為を新たに処罰することとされました」と説明されています。
 犯罪被害者支援の場面において、性犯罪や性暴力の被害者が16歳未満の子どもである事例は決して珍しいものではありません。
 新設された、この「16歳未満の者に対する面会要求等の罪」によって、こうした被害が少しでも減る事を祈っております。

※ なお、先程あげた刑法182条には「拘禁刑」と規定されていますが、令和5年7月時点では、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)が施行されていないため、「懲役」と読み替えることになります。