【離婚】養育費を確保するために① ~法務省による情報提供~2023年05月12日 15:36

離婚をしたいとき、離婚をすることになったとき、夫婦の間に子どもがいる場合には、「養育費」について話し合いがされることが多いと思われます。

しかし、話し合いでは決着がつかない場合、あるいは払うと言っていたのに相手が払わない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用することを検討しなければなりませんが、申立書を作るということの負担、ハードルは大きいものではないでしょうか。

同様に、話し合いをしたけれど、その取り決めを「合意書」にするにはどう書いたらいいのか、あるいはそもそも何をどう決めていけばいいのか分からない…

離婚を二度三度と経験される方は多くありません。離婚のご相談を受けている場面で「生まれて初めて経験したので分からない」、こうしたコメントをされる方は多いなという印象があります。

もちろん、私たち弁護士といった法律の専門家に依頼をしてしまえば、こうした書類を作成したり、中身を考えたりするのは弁護士等になりますから、ご自身の負担やハードルはぐっと減ります。

が、その分、弁護士等の費用がかかってしまいます。

これから一人親として子どもと生活をしていかなければならない場面ですから、できれば少しでもお金は掛けたくないというのが、おそらく多くの方の本音ではないでしょうか。

こうした声にこたえる形で、法務省は、法務省ウエブサイトで、養育費や面会交流の合意書のひな形、養育費の算定表(家庭裁判所の調停で使われている養育費を決める際に参考にされる表のことです)、養育費バーチャルガイドのYouTube動画などを提供しています。

このほかにも知りたい情報を見つけられるQ&A、調停を簡単に申立てすることができるよう簡易な申立書書式の提供(作成するための動画もあります)を行っています。

調停は必ずしも弁護士を就けなければ進められない手続ではありませんので、まずはご自分でやってみたい!という方には、こうした法務省の取組が参考となると思われます。是非ご活用ください。

ただし、離婚を含む夫婦関係調整調停事件について、2020年の統計ではありますが、代理人として弁護士が就いている割合は56.0%にのぼっており(弁護士白書2021年版より)、かつ、この割合は年々増加傾向にあります。

そのため、「自分で頑張って申立てをしてみたけれど、相手方には弁護士が就いていて不安になった」というご相談も時々お見受けします。

先ほど述べましたとおり、弁護士を就ければ弁護士費用といった費用は、どうしても掛かってしまいます。ですが、弁護士費用を立替えてくれる法テラスが利用できる場合もありますので、悩んだときには、お一人で抱え込まれず、一度、弁護士に相談されることをおすすめいたします。 

【法務省 離婚を考えている方へ】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00011.html

【法務省 離婚知りたい情報Q&A】

https://www.moj.go.jp/MINJI/top.html

【法務省 養育費調停の簡易な申立て書式】

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00288.html

【法テラス】

https://www.houterasu.or.jp/

 



【離婚】養育費を確保するために② ~札幌市 ひとり親家庭等養育費確保支援事業~2023年05月26日 15:02

【離婚】養育費を確保するために②
 ~札幌市 ひとり親家庭等養育費確保支援事業~

 令和3年より札幌市において、「ひとり親家庭等養育費確保支援事業」が始まっております。
 具体的には

◆民間ADRを使って養育費の取り決めのための協議を行う場合の第1回までの調停費用を補助(上限5万円)

◆養育費の取り決めにかかる公正証書作成費用や家庭裁判所の調停申立て費用などを補助(上限2万4000円)

◆保証会社との間で養育費保証契約を結ぶ際にかかる費用の補助(上限5万円)
といった制度が存在します。
 
 それぞれ内容がぱっと見では分かりにくいところがありますので、1つずつ簡単に説明しますと、
 1つめの民間ADRとは、札幌市でいえば、札幌弁護士会紛争解決センターでの調停申立てが考えられます(その他にも法務大臣の認証を受けた認証ADR事業者が含まれます)。
 ただし、札幌弁護士会の紛争解決センターで調停を申し立てるためには、まずは弁護士による法律相談を札幌弁護士会法律相談センターに申し込む必要があります(申立てには弁護士の紹介状が必要になるためです)。
 なお、札幌弁護士会紛争解決センターの調停は、申立手数料が1万1000円(令和5年5月現在)、成立した場合には一定の手数料を納める必要があります。また、原則として3回以内の調停で解決することを目指す運用をしているようです。
 ただし、札幌市では、「第1回まで」の調停費用を補助とのことですので、具体的に幾らまで補助してもらえるのか分からない部分がありますので(申立て手数料1万1000円は含まれそうですが、成立した場合の手数料まで含むのか確認が取れていません)、この補助を使って札幌弁護士会紛争解決センターでの調停申立てを検討されたい方は、札幌弁護士会紛争解決センターに一度お問い合わせされることをお勧めいたします。

 2つ目は、養育費の取り決めにかかる公正証書作成費用や家庭裁判所の調停申立て費用を、2万4000円を上限として補助するというものです。
 家庭裁判所の調停申立費用は、数千円程度となります。
 また、養育費の取り決めにかかる公正証書作成費用の作成手数料は、月額養育費×支払月数で計算されます。
ただし、養育費の支払期間が10年を超える場合は10年間として計算されます(公証人手数料令第13条1項)。
 例えば、【子ども:3歳、人数:1人、金額:月額2万円、期間:20歳まで】の場合には、2万円×12カ月×10年(20歳までは17年ありますが、手数料の計算は最大で10年)=240万円ですから、手数料は1万1000円となり、この金額を補助してくれることになります。
 ただし、札幌市が補助するのは、あくまで「養育費」に掛かる部分のみとなります。
 公正証書の中に財産分与や慰謝料、年金分割の取り決めなどがあれば、それは補助の対象「外」となり自己負担となります。
離婚全体の記載がある公正証書作成の費用については、お近くの公証役場にてお問い合わせ下さい。
東京の昭和通り公証役場のホームページに、分かりやすい具体的な例が書かれていました 

 http://kousyouyakuba.net/ippankouseisyousyo/rikon-youikuhi-isyaryo/

 最後は、保証会社との間で養育費保証契約を結ぶ際にかかる費用の補助です。

 まず、「養育費保証契約」とは何か?というところですが、これは、事前に、養育費を受け取る親(Aさん)と保証会社との間で保証契約を締結することで、養育費を支払う親(Bさん)が支払いを怠った場合、保証会社が、養育費を支払う親(Bさん)に代わって、養育費を受け取る親(Aさん)に支払うというものです。
 ただし、札幌市が補助するのは、保証会社と養育費保証契約を締結する際に必要となる保証料や住民票、収入印紙等の取得費用に限られます。
 したがって、保証会社の多くは、初回の保証料のほかに毎月の手数料が発生したりしますので、最初に掛かる費用(最大5万円)以外は、自己負担となります。
 また、こうした「養育費保証契約」の中には、養育費を受け取る親(Aさん)と保証会社との間で保証契約を締結するだけでなく、養育費を支払う親(Bさん)と保証会社との間でも保証委託契約を最初に締結することが必要なものもあります。

 そのため、養育費を支払う親(Bさん)の協力が得られなければ、そもそも「養育費保証会社」を結べない場合もかなりあるのかなという印象があります。

【札幌市のウエブサイト】
https://kosodate.city.sapporo.jp/mokuteki/money/hitorioya/10962.html

【札幌弁護士会紛争処理センター】
https://www.satsuben.or.jp/center/by_content/detail02.html