【犯罪被害者】性犯罪関係の法改正① ~強姦罪から強制性交等罪、そして不同意性交等罪へ~2023年07月24日 09:10

【犯罪被害者】性犯罪関係の法改正① ~強姦罪から強制性交等罪、そして不同意性交等罪へ~

 令和5年(2023年)6月16日、刑法を含む、性犯罪関係の法律の大幅な改正法が成立し、その大部分の規定が同年7月13日から施行されました(※施行とは、法律の効力が生じている状態といった意味合いです)。
 そこで、今回は、性犯罪関係の法改正の内容について3回に分けてお話させていただきます。

 平成29年(2017年)に改正される前の刑法には、「強姦罪」という規定があり、「暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。」と規定されていました。
 しかし、この規定だけでは処罰する事のできない性暴力も多く存在し、処罰範囲を拡げる必要があったことから、平成29年(2017年)の法改正に 
よって、強姦罪は強制性交等罪へと変更され、例えば、性交ではない、性交類似行為も処罰の対象となったり、法定刑も3年以上から5年以上へと引き上げられました。

 ところが、実際におきている性暴力を見てみますと、この強制性交等罪でも被害者救済としては不十分な現実があり、刑法の性犯罪の規定は実際の性暴力の実態を反映していないとの指摘や批判がなされておりました。

 そこで、こうした背景もあり、かねてより性犯罪関係のさらなる法改正に向けての議論が進められていたところ、上述の通り、令和5年(2023年)6月16日に刑法を含む、性犯罪関係の法律の大幅な改正法が成立し、一部を除く、大部分の規定が同年7月13日から施行されました。

 そこで、今回は、標題の通り、強姦罪から強制性交等罪、そして不同意性交等罪へと法改正がなされた点に絞ってお話をさせていただきます。
 まず、今回改正された不同意性交等罪は、以下のように規定されております。

 (不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに 
 類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全 
 うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、
 肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若
 しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百
 七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有
 無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする
 者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしているこ
 とに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十
 三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前
 の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

 そのため、刑法176条1項各号に定められた以下のいずれかの原因によって、性交等(性交等には、性交、肛門性交、口腔性交のほか、膣や肛門に、陰茎以外の身体の一部または物を挿入する行為も含まれており、この点でも改正されています)をした場合に、不同意性交等罪が成立することになります。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があるこ
 と。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあ
 ること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利 
 益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

 また、改正後の177条2項により、わいせつな行為でないと誤信させたり、人違いをさせること、または相手がそのような誤信をしていることに乗じて性交等(性交等には、性交、肛門性交、口腔性交のほか、膣や肛門に、陰茎以外の身体の一部または物を挿入する行為も含まれており、この点でも改正されています)をした場合にも、不同意性交等罪が成立することになります。

 そして、改正前の強制性交等罪では、13歳未満の乳幼児や児童といった子どもに対し性交等をした場合、その者の同意の有無に関わらず強制性交等罪が成立するとされていましたが、今回の法改正により、13歳未満の子どもに加え、13歳以上16歳未満(多くの場合、中学生)の子どもで、加害者が5歳以上年長である場合にも、その者の同意の有無に関わらず不同意性交等罪が成立することになりました。

※ なお、先程あげた刑法182条には「拘禁刑」と規定されていますが、令和5年7月時点では、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)が施行されていないため、「懲役」と読み替えることになります。