【震災法律相談】地震時の法律問題③~地震によって、ローンの返済に困ったとき~2018年12月11日 09:02

1.自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインとは?

  この度の北海道胆振東部地震によって、住宅ローンなどの返済にお困りの方に、是非、ご紹介したい制度があります。

  この制度は、東日本大震災や熊本地震、そして、この度の北海道胆振東部地震といった、「災害救助法が適用された自然災害」の影響を受けたことによって、住宅ローン、住宅のリフォームローン、事業性ローン、銀行のカードローン、消費者金融やクレジット会社の借入れなどの債務を弁済することができなくなった「個人」の債務者であって、「災害の影響によって」、各種ローンなどの支払いをすることができない、または近い将来において支払うことができないことが確実と見込まれる方を対象に、各種ローンの「免除・減額」を申し出ることができる制度です。

  このガイドラインが使えない場合(あるいは使わない場合)、例えば、地震で家が全壊してしまい、家を修繕しなければ住むことができない、でも、壊れた家の住宅ローンは、残りまだ20年あり、家の修理のための住宅ローンを新たに組むこともできない、加えて、そのほかにも各種ローンがあって、全てを支払うことは到底できないといった被災者の場合、この被災者の方が取りうる方法は、
①自己破産、
②個人再生手続、
③各債権者と交渉して弁済方法について協議する、
といった方法くらいしか無いと思われます。

  そのため、いずれの方法であっても、いわゆるブラックリスト(個人信用情報)に載ってしまいますし、①の場合には、住宅や義援金なども手放した上、手元に残すことのできるお金は破産法上認められた自由財産のみとなります(「自己破産」について、詳しくはこちらをご参照ください。http://www.murakamilaw.jp/kojinhasan.html)。

 また、②の場合には、個人が負っている債務の一部を分割で支払い、最終的に残りを免除してもらう手続きのため、借金の額にもよりますが、財産を手元に残し、借金の2割程度を分割で支払い、残りを免除してもらえる場合もありますが、最低弁済額によっては、義援金含め保有財産を全て吐き出すことになる場合もあります(「個人再生手続」について、詳しくはこちらをご参照ください。http://www.murakamilaw.jp/kojinsaisei.html)。

 そして、③の場合には、各債権者と個別交渉になりますので、基本的に借金の返済時期を遅らせたりすることはできても、減額ということは難しいと思われます。

 
  これに対し、この「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」といいます。)を利用した場合、ブラックリストに載ることはありませんし、義援金などに加え財産の一部(自己破産や個人再生の場合よりも多額となることが多いです)を手元に残すことができます。

  また、この手続きには、弁護士や土地家屋調査士などの登録支援専門家の支援が必要ですが、費用はかかりません(無料となります)。

 そして、自己破産や個人再生と異なり、このガイドラインを使って債務整理をされても、原則、保証人への支払いは要求されませんし、この手続きを利用したい方は、後述でご紹介する通り、ご自身のメインバンク(一番借入額が多い借入先)にガイドラインの利用を申し出ることで手続きが進んでいきますので、方法としても簡単であるというメリットがあります。


2. 具体例

  とはいっても、なかなか具体的なイメージが抱きにくいと思います。
そこで、熊本地震の際に、九州財務局が発行した分かり易い広報紙がありますので、どういったイメージ、ケースが想定されているのかについては、こちらをご参照ください。
http://kyusyu.mof.go.jp/content/000163856.pdf

3. 手続について

  このガイドラインを利用するためには、まずは、借入額が一番多い借入先に、この手続きを利用したいと申し出る必要があります。
 
  また、この借入先からこの手続きを利用することの「同意書」をもらい、お近くの弁護士会に、「同意書」と各弁護士会に備えられている「登録支援専門家移植依頼書」を提出してください。
  なお、この度の北海道胆振東部地震における被災者の方は、札幌弁護士会による、こちらの「札弁被災者支援ニュース第6号」に詳しい情報が書かれていますので、是非、内容をチェックしてみてください。
https://www.satsuben.or.jp/info/shinsai/pdf/news_no06.pdf