【犯罪被害者支援】ストーカー被害相談について2019年06月21日 14:08

1.法テラスによるDV等被害者法律相談援助事業の開設

  法テラスの新しい法律相談援助業務として,DV,ストーカー,児童虐待(以下,「DV等」といいます。)の被害を現に受けている疑いのある方への法律相談業務が,平成29年に開始されました。

  法テラスの利用には,法律相談であれ代理援助(事件の依頼)であれ,民事法律扶助には資力要件があるのですが,本事業は,以下の条件を満たす場合,原則,申込者の資力に関係なく法律相談援助を受けることができます(注;ただし,一定の資産をお持ちの方には,後日,相談料のご負担を求める場合があるそうです)。

 【条件】
① 申込者がDV等被害者(特定侵害行為を現に受けている疑いがあると認められる者)であること
② 被害の防止に関して必要な法律相談であること
③ DV等被害者法律相談援助の趣旨に適すること
  
  そこで,これらDV等について,何回かに分け,書かせていただこうと思います。

2.ストーカー行為とは?

  ストーカー規制法では,何人も,つきまとい等をして,その相手方に身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならないとされています(同法3条)。

 そこで,まず,ストーカー規制法で禁止される「つきまとい等」とは何か?が問題となりますが,ストーカー規制法第2条では,次のとおりの定義を設けています。

 なお,(*)が付いている条項は,平成28年の法改正によって新設された規定となります。

(定義)
第二条 この法律において「つきまとい等」とは,特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,当該特定の者又はその配偶者,直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し,次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一 つきまとい,待ち伏せし,進路に立ちふさがり,住居,勤務先,学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし,住居等に押し掛け,又は(*)住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ,又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会,交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず,又は拒まれたにもかかわらず,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,若しくは(*)電子メールの送信等をすること。
六 汚物,動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し,又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ,又はその知り得る状態に置くこと。
(*)八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き,その性的羞恥心を害する文書,図画,電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き,又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
(*)2 前項第五号の「電子メールの送信等」とは,次の各号のいずれかに掲げる行為(電話をかけること及びファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう。
(*)一 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。次号において同じ。)の送信を行うこと。
(*)二 前号に掲げるもののほか,特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して,その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。
(*)3 この法律において「ストーカー行為」とは,同一の者に対し,つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については,身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。

3.平成28年法改正のポイント

 平成28年の法改正の大まかなポイントは,

①  住居等の付近にうろつく行為,SNSやブログにメッセージを送ったり書き込んだりし続ける行為が「つきまとい等」に含まれることになった
②  親告罪とされていたのが非親告罪とされた(つまり,被害者が被害申告をしなくとも刑事訴追される場合がある)
③  厳罰化した

 といった点になります(注;平成28年の法改正はこれらに限られません)。

4.ストーカー被害に遭われたら

  ストーカー規制法の成立や法改正の背景には,ストーカーによる殺人事件など,ストーカー犯罪の凶悪化,被害の重篤化があります。

 ストーカー規制法が,「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」を必要としているように,ストーカーの行為者(加害者)の感情は,被害者への好意からスタートしています。
 
しかし,恋愛感情には,執着心や支配欲を伴う場合があり,それ故,好きだという気持ちが,ストーカー行為を繰り返すことによって,攻撃性にシフトチェンジしてしまうのではないか,ストーカーの加害者の心理については,このような分析がなされています。

 また,ストーカー行為者は孤独であるからこそ,自分を客観視する機会に欠け,悪質な行為を繰り返してしまうのだといった分析をされている学者の方もいらっしゃいます。

 ですから,ストーカー被害に遭われた方は,ストーカーは突然,凶悪化する可能性を秘めていますので,被害が深刻化する前段階から警察に相談されることをお勧めいたします。

 なお,警察がどういったことに対応してくれるかといった点ですが,当法律事務所(弁護士法人村上・久保法律事務所)の所在地は北海道ですので,北海道警察の以下のURL
(北海道警察HP ストーカーからあなたを守るために)を添付いたします。
 道内の方は参照していただければと思います。

https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/seian/stoker/stoker.htm

  また,正式な統計ではありませんが,行政手続としての口頭警告(警察官からの警告)によって,9割近くのストーカー被害が止むといった報告もありますので,お悩みの方は勇気を持って相談されることをお勧めします。

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