【犯罪被害者支援】 犯罪被害給付制度2018年12月25日 18:10

1. 犯罪被害給付制度とは?

通り魔殺人など「故意」の犯罪行為によって、ご家族の方を亡くされたご遺族、あるいは、重傷病を負ったり、または後遺障害が残った被害者の方に対して、国が給付金を支給する制度です。

なお、以下の情報は、平成30年(2018年)10月時点での情報を基礎にしていますが、法律の改正による情報の更新が間に合っていない部分もあるかもしれませんので、ご留意ください。
また、この制度は、要件が複雑なので、ご自身で手続きを進める場合には、申請窓口となる警察の担当部署への事前相談は必須となります。


2. 利用するための要件とは?

【対象となる犯罪】

まず、対象となる犯罪は、人の生命や身体を「故意」に害する犯罪に限定されています。
したがって、例えば交通事故は、故意に事故を起こさない限り「過失犯」ですので、交通事故といった過失犯は含まれないことになります(交通事故の場合、自賠責保険が適用されます)。

【対象となる被害の程度】

また、対象となる被害の程度は、「死亡」、「重傷病」(療養の期間が1ヶ月以上で、かつ入院3日以上を要する負傷または疾病。PTSDなどの精神疾患である場合には、療養の期間が1ヶ月以上で、かつその症状の程度が3日以上労務に服することができない程度であることを要します。)、または「障害等級1級から14級までに該当する後遺障害」に限られます。

【支給を受けられる人】

さらに、支給を受けられる方は、「被害者」または「ご遺族」であって、犯罪があった当時、日本国籍を有する者または日本国内に住所を有する者となりますが(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条、以下、「犯給法」といいます。)、「ご遺族」の場合、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で第一順に立つ方が支給を受けることになります。
ただし、「ご遺族」の場合、犯罪行為の内容によって、支給が一部または全部を受けられないケースもあります。

以下は、給付金の支給が受けられない、あるいは減額される事案の一例です。

(1)被害者またはご遺族と加害者との間に親族関係(事実上の婚姻関係を含む)があるとき
ただし、犯罪行為が行われたときにおいて、親族関係が破綻していたといった特段の事情が
ある場合には一部支給可能な場合もあります
(2)被害者が犯罪行為を誘発したとき、そのほか被害者にも責めに帰すべき行為があった場合
(3)被害者またはそのご遺族などと加害者との関係そのほかの事情から判断して、給付金を支給
することが社会通念上適切でないと認められるとき
(4)被害者などが暴力的不法行為を行うおそれがある組織に属していた場合

3. どういった給付金が受けられますか?

◾️ 遺族給付金
(1)平成30年3月31日よりも前に発生した犯罪行為によって亡くなられた場合

生計維持関係遺族がいる場合
2964.5万円〜872.1万円
それ以外の場合
1210万円〜320万円

(2)平成30年3月31日以降に発生した犯罪行為によって亡くなられた場合

犯罪被害者の収入とその生計維持関係遺族の人数に応じて算出した額(生計維持関係遺族に
8歳未満の遺児がいる場合は、その年齢・人数に応じて加算)
犯罪被害者が死亡前に療養を要した場合は、負傷又は疾病から3年間における保険診療によ
る医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額の合計額を加算した額
(注記)第一順位の遺族が二人以上いるときは、その人数で除した額となります。

◾️ 重傷病給付金
負傷または疾病にかかった日から1年間における保険診療(※したがって、自由診療や入院時の
病衣代などは含まれません。)による医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額
ただし、上限額は120万円です。

◾️ 障害給付金
重度の障害(障害等級1給から3給までに該当する後遺障害が)残った場合
3974.4万円〜1056万円
それ以外の場合
1269.6万円〜18万円

4. 支給を受けるためにはどうしたらよいのですか?

給付金の支給を受けるためには、申請書その他必要書類を、お住いの警察署または警察本部に提
出しなければなりません。
なお、給付金の支給の手続きについては、日本弁護士連合会による犯罪被害者法律援助制度を利用することで、弁護士費用の負担を掛けずに(※同制度においては、弁護士報酬相当分や費用相当分については、被害者の方に負担を負わせないことを基本としています。)弁護士に手続きを依頼することもできます(弁護士法人村上・久保法律事務所においても、犯罪被害者法律援助制度を使うことはできます)。

 日本弁護士連合会による犯罪被害者法律援助制度の詳しい内容については、「【犯罪被害者支援】被害者のために弁護士ができること」もご参照ください。
http://murakamilaw.asablo.jp/blog/2018/10/18/8977728

5. 加害者から賠償を受けたり、労災が支給されてももらえるのですか?

税金を財源としている制度ですので、加害者から賠償金を受けたときなどは給付金の支給は調整されます。また、労災などのほかの法令により給付が受けられる場合にも、その額の限度において給付金は調整されます。

6. 申請に期限はあるのですか?

犯罪行為による犯罪被害の発生を知った日から2年を経過したとき、または当該犯罪被害が発生した日から7年を経過した時はすることができなくなります(犯給法10条2項)。
ただし、加害者により身体の自由を不当に拘束されていたなどの「やむを得ない理由」があり、期限内に申請をすることができなかった場合には、その露優雅止んだ日から6ヶ月以内に限って申請をすることができます(犯給法10条3項)。

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